信濃わらび山荘将棋合宿1日目の様子 part1
初めて『信濃わらび山荘将棋合宿』が行なわれたのは2010年10月30日~31日のことでした。
憧れの女流棋士、中井広恵女流六段と一泊二日で将棋三昧の至福の時を過ごせるなどとは、単なる一中井広恵ファンだったわたしは夢にも思っていませんでした。
合宿終了後「またやりたいですね」との会話が交わされましたが、お忙しい中井先生が再び合宿を開く事は難しいだろうと感じていました。
ですから、この時はこの夢のような企画の『第二回』が本当に行なわれるとは思えませんでした。
そんなわたしの予想は嬉しくもハズレ、『第二回信濃わらび山荘将棋合宿』は2011年4月22日から24日まで、なんと二泊三日にグレードアップして行なわれたのでした。
この合宿終了後には「年二回は大変でしょうから、せめて毎年、この合宿を続けられたらいいですね」と言ったのですが、わたしの希望はまたしても嬉しく裏切られて、『第三回信濃わらび山荘将棋合宿』が2011年11月4日から6日まで、前回と同じく二泊三日で開催されました。
場所はもうお馴染みとなった『信濃わらび山荘』。
第一回の合宿は去年とほぼ同じ時期でしたが、紅葉は終わっていて、落葉樹の葉っぱはなくなっていました。
気温は東京の真冬並みでしたからねぇ。
今回も寒い事を覚悟していたのですが、震えるほどの寒さではなかったので、丁度見頃の綺麗な紅葉が合宿隊を出迎えてくれました。
到着するとすぐに荷物を運び込み、宿泊棟の準備を整えて、食堂を対局場に変身させます。
到着が予定より多少遅れた事と大盤が無いので、ミニ講座は中止にしてペア将棋トーナメントから合宿プログラムの開始。
初日からの参加は先生3名を含め10名。
始めはペア5組を作ろうとしましたが、対局するのに一組余ってしまうので、ペア2組とトリオ2組の4組で変則ペア将棋となりました。
中井先生の「この中で居飛車党は?」の問いかけにわたしは手を上げました。
残るメンバーは振り飛車党ばかりだったので、手を上げたのはわたし一人。
結果わたしが中井先生とペアを組むことになりました!
将棋を始めて将棋雑誌を読むようになり、中井広恵ファンとなったわたし。
女流棋士との親睦将棋会では、何度か近くで中井先生をお見かけしましたが、畏れ多くて声を掛けることが出来なかったわたし。
そんなわたしが中井先生を独り占めして将棋を指せるなんて!
クリート・ボイヤーに守備を教わる。
ジミー・ペイジにギターを教わる。
ケニー・ロバーツにライディングを教わる。
タイガー・ウッズにショットを教わる。
わたしにとってはこれらに匹敵する出来事です。
ドキドキしながらの一回戦。
対戦相手は植山先生・不利飛車迷人さん・paraさんトリオ。
相手はアマ二人が振り飛車党なので当然対抗型に。
このメンバーではわたし一人が級位者レベル。
残念ながらわたしの疑問手連発で敗北。
三位決定戦は大野先生・HONさん・Wさんトリオと。
こちらもアマ二人が振り飛車党なので対抗型になりました。
終盤、中井先生は勝ちを読み切っていました。
しかしそれは23手詰め!
詰め将棋として出題されてもわたしには解けません。
まして実戦の流れの中でわたしにそんな長手数の詰みを発見できるはずも無く、またしてもわたしの悪手により敗北。
将棋ファンにとっては夢のような中井先生とのペア将棋は、勝つことが出来ずに終了。
結果はともかく、至福の時を堪能しました。
夕飯は食べきれないほど。
この後も将棋を指すので、ビールは乾杯の一杯だけで我慢。
宿泊棟のラウンジにテーブルを並べて対局場に。
もう三度目なので、セッティングは手馴れたもの。
先生三人がそれぞれ二面指しで指導対局開始。
中井広恵女流六段戦
わたしはWさんと一緒に中井先生の指導を受けることに。
手合は二人とも飛車落ちで、Wさんは右四間飛車の定跡形で鍛えられています。
それでは中井先生との十二局目を見てください。
感想戦
わたしより一足早く終局したWさんの感想戦。
わたしは右四間を指さないので良くわかりませんが、上手が7二玉型だと下手の攻めは成功するところ、6二玉型で迎え撃つとすぐには潰されずに受けられるようなのです。
中井先生はWさんに攻め潰してもらおうと、わざと7二玉型で下手の攻めを待っていたようです。
しかしWさんは仕掛けのチャンスを見送ってしまったのでしょう。
「いつも6二玉型なので7二玉型の攻め方がよくわからなかったです」とWさん。
中井先生が植山先生と大野先生に「飛車落ちは攻めの勉強なんだから、まず7二玉型を攻め潰して攻めを覚えてもらわなくちゃダメでしょう」と叱り付けていました。
植山先生は「7二玉じゃやられちゃうからねぇ」
「二人とも指導対局なのに負けるのが嫌なんだから。そうやって受け潰してばかりいるからWさんは手が延びなくなっちゃうんじゃないの。Wさんが7二玉型に三連勝するまで6二玉型は禁止!」と中井先生。
なるほど。
中井先生は下手がうまく攻めてくれるのを期待しながらの指導なんですね。
下手がうまく指せたら褒めて伸ばすという事なのですね。
植山先生や大野先生の指導は、最善と思われる手を続けて、何度も負かしながら少しずつ下手に強くなってもらおうという指導方法なのでしょう。
さて、わたしの将棋ですが、54手目の▲4一銀は銀のヒモ付きなので両取りというわけではありません。
ですから55手目は△3三歩と飛車の直通を遮断されるのが嫌でした。
しかし△3三歩には▲5六飛から飛車角交換をして▲3五角と飛び出すと攻めは続きそうですね。
中井先生はその順を嫌ったのか、飛車を成らせても清算する順を選びました。
60手目は上手の馬筋を止める目的で▲3七桂と跳ねましたが、▲3五角の方が良かったですね。
70手目の▲5四歩は緩手でした。
幸い逆転されるほどの悪手ではありませんでしたが、ここでは▲7一金と捨てる好手がありました。
△同金と取らせてから▲5二香成とすると、△同歩は▲7一龍から詰んでしまいます。
△同銀には▲7一角成△同玉と角を切って、▲7三金と打てば寄りでした。
あざやかな寄せ手順ですが、級位者には発見出来ません。
最後は中井先生の王手ラッシュを間違えずに受けて、打ち歩詰めで逃れていると読んで勝てました。
ノーガードの攻め合いに誘い込んだのは、変に紛れを求めずに『うまく攻めてみなさい』という中井先生の指導方針を表す一手だったのでしょう。
これは中井先生が緩めてくれたのだと思います。
中井先生、ご指導ありがとうございました。
信濃わらび山荘将棋合宿1日目の様子 part2
風呂上りの一公さんも加わり、相手を変えての指導対局や生徒同士の対局が、いつ果てるとも無く続きます。
その後も対局を重ね、気が付くと2時を回っていました。
もう少し指したい気持ちもありましたが、まだ合宿は初日。
あと二日たっぷり将棋を楽しめます。
「いつもより30分ほど早いけど、今日はこのへんにしときますか」
わたしの一言で一日目終了。
対局情報
対局日 :2011年11月4日
棋 戦 :大野教室
対局場所:信濃わらび山荘
飛車落ち対戦成績
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●○
●○○○●○●●○○
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